水の精霊・アクアンズ。
地の精霊・アーシーズ。
風の精霊・エアロス。
三つの精霊達はピクシーの言うことをちゃんと聞いてるみたいで…なんというか、本当、どうなっているんだろう?
あの精霊達にはいろいろとお世話になった記憶がある。敵としても味方としても、そして仲魔を作るときの合体材料としても。
勝手に仲魔になったのかな? けれど今現在の僕の中にあるストックの中には彼らが入る余地はなかったはずだ。
すくなくとも三体もの精霊は無理。
彼らは僕の存在にも気がついているらしく、ナミさんの世話をしている合間にあの高圧的な笑い声をあげて存在をアピールしてくる。
どこぞの小説のように精霊たちが女の人の形をしていたりすれば、まだいいのかもしれないけれど、あいにく僕が知っている、そしてピクシーが連れてきた連中の形はどうあがいても男にしか見えなくて、声もまんま男のものだ。
どこから彼らを連れてきたのか、すごく気になるんだけれど今はそんなことよりもナミさんの看護の方が先。
今、外ではウソップたちにピクシーがびしびしと指示だしてるみたいだ。
それからしばらくたって、船に強い衝撃が響く。
とっさに出したペルソナのサタンとサンジの機転でナミさんにはその衝撃の大半は伝わっていない。

「ちょっと見てくるから待っててくれ」

…この後、何があったかな…。
ドラムといえば、船医になる青い鼻のトナカイのことしか思い浮かばない。
あと、サクラ。
僕はうっすらそう思いながら、頷いて看病を続ける。

「何があったのかしら…」

何があってもあの連中とピクシー達がいるのなら、たいていのことはできるから心配しなくてもいいと思う。
僕はそんなことを思いながら、ビビ王女を見つめ、それからナミさんの方を見る。

「そうね…。外のことは後で皆に聞けばいいのよね。今はナミさんだわ」

僕は頷くとペルソナを引っ込めた。
そのときだった。
銃声が鳴り響いたのは。

「!! あたし、見てくるわ!! カルーとくんはここを!」

うん、と頷く。
いろいろ派手にやってるようだけれど、ナミさんに響かなきゃいいし、メリーがあんまり痛むようなことはされたくない、なんて思う。
なんでだろう…。
この船に乗り出してから、僕はどんどん、変えられていくような錯覚を覚えるけれど。
…でも…。
…。

「吹きとべぇ!!!」

聞いたことのある声が、そう言っているのが聞こえた。
ルフィが暴れてるのか。
メリー、ご愁傷様…。
あとでピクシーにメディアラハン(味方全員HP全回復)の魔法でもかけてくれるように頼んでみようか。
気がついたらそう考えていて。

「くぇ?」

カルーになんでもない、と僕は首を横に振る。
そう、なんでもないんだ。/心が戻ってきてるんじゃないのか?
そう、なのかな?
僕の問いかけに、マガタマたちは笑うばかりだ。




その日の夜。
夜中の航海はとても危険だけれど、見張りにはピクシーと精霊たちが船を動かすからしなくてもいいって聞くとルフィや皆は女部屋に雑魚寝しはじめた。

「水とか…ぶっかけたら、熱、ひかねぇかな」

そう言ったルフィをサンジが蹴り飛ばす音を聞きながら、ナミさんの世話をしているうちに、気がついたら僕しか起きていなかった。
ビビ王女も看病の疲れもあってナミさんのベットにすがりつくように眠ってしまっている。
僕は水を取り替えるためにそっと部屋から出ると、ピクシーが「島を見つけた」と教えてくれた。
できるだけ船の中にいる人間に衝撃を与えないように、ゆっくりとその方向に船を向けてメリーを走らせる。
その間、僕が部屋に戻るとみんなの鼾や寝息をBGMにナミさんが身体を起こしていた。



瞬きして、そして僕はルフィを踏んでしまいながらもナミさんの傍に行った。
起きちゃ、だめだ。
僕が布団をそっとかける仕草をすると、ナミさんはおとなしく寝てくれた。

「…ありがと」

感謝の言葉に首を横に振る。
手のひらを額につけるとかなり熱い。

「冷たくて、気持ちいい…」

そのまま瞼を閉じさせた。

「船は…?」

何も考えないで、ただ今は自分のことだけ考えるんだ。ナミさん。
僕はそう思いつつぬれたタオルを彼女の額にもっていき、孤児院に居るときによく子供たちにしたときのような仕草を思い出して、なだめるように布団の上からやんわりと一定のリズムで叩いてみた。



あたし、ニーネのこと、大好きよ。






ふいにヒメの声がよみがえった。
ナミさんの寝息が聞こえてきたので、叩くのを止めてポケットの中にあるヒメの宝物に触れた。
…。
うん、大丈夫だ。
ナミさんは死なせないよ、ヒメ。
僕は懐中時計をそっと撫でてから、毛布を跳ね除けてしまっているウソップやサンジたちにもう一度それをかけ、ビビの肩にもそれらをかけてから看病を続けた。

次の日。

僕とサンジ、そしてビビ王女の三人は交代でナミさんの看病を続けていた。
一晩僕が起きていたことに驚いたサンジたちは、僕に仮眠の時間をくれた。
「「起こせよ!!」」とウソップとルフィに叱られ、ゾロに頭を小突かれ、サンジに苦笑いされたっけ。
ビビ王女とカルーはひたすら恐縮していた。
…なんでだろう? 判らないや。
島が近いことをピクシーが伝えると、皆は船の修理に走ったり、その島を速く肉眼で確認したいのか外に出たりと大忙しだ。
僕は外のことはピクシーたちに任せてあるから、ナミさんにつきっきりだ。
今はルフィと僕とゾロが見ている。

「島があったぞー!!」
「島かぁ!!? おい、ナミ! よかったな!! 島だってよ!! 病気治るぞ…!!」

外からの声にルフィがそう反応して、その後はもう外に見に行きたいんだろう。
カタカタと足をゆすっていたから、ゾロが「いいから見て来いよ」と言われて出て行く。

、おめぇも着替えて来い。外はかなり寒いからな」

ゾロの言葉に僕は頷く。
人修羅の身体なら、寒さとか平気(マガタマの効果のおかげで)だけれど、今の僕は人間の子供並。
寒さも暑さも感じられる。
僕は自分の着替えとナミさんのジャケットと、それからついでにルフィの服を用意した。
いくらなんでも赤のノースリーブでいつまでもいられるわけじゃないはずだ。
ゴム人間でも。
僕の用意を横目で見てから、ゾロが部屋を出て行った。
たぶん、島にいる人間(=医者)を探す者と船の見張りとに分けなきゃいけないだろう。
…。
僕は。


あたし、ニーネのこと、大好きよ。



ヒメの声がした。
…そうだね、ヒメ。

僕、ナミさんのことが心配なんだ。



行かないで、傍にいて、お願いニーネ!!



彼女の声が蘇って、僕は懐中時計を握り締めた。

別にヒメと重ねてるわけじゃない。
けれど。
…。
足手まといにならないようにすればいい、よね。
「寒い! 服! 俺の服!!」とルフィが騒いだので服を渡すと「ありがとな!」と礼を言われた後に外に出てくルフィ。
その後、銃声が聞こえた。
ナミさんの看病をカルーに任せて甲板に出ると。

「医者を呼んでください。仲間を助けてください」

ビビ王女の隣でルフィが土下座していた。




その後、僕はストックに戻ろうとするピクシーを捕まえて、怪我をしてしまったビビ王女と、ついでにまだ足の傷がひどいゾロたちに僕のマガツヒを渡して交渉した上で魔法をかけてもらい、船にはエアロスをつけて守ってもらうことにした。
…ナミさんが治っても船に何かありました、なんてことになったら困っちゃうからね。
僕とピクシーのやりとりを見ていた船長が、思いっきりブーイングした上にその後僕をおんぶすると言って聞かなくなったのは、また別の話。




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