(4)


「流石は大悪魔」

我という一人称の彼はそう言うと傲慢な笑みを浮かべる。

「それでこそ我の仲魔としてふさわしい」

この人が『仲魔』っていうとどうしても脳内で『下僕』って文字に変換されてしまう。
僕はウソップが作ってくれた半棒をさらに一振りして槍の状態にする。
この人の場合は殺すつもりでやらないとこちらが殺される。
ビビたちのところにヒメを返してもらわなくちゃいけないから、殺されるわけには行かないんだ。

「その擬態のままでいいのならば、そのまま『仲魔』にしてやろう。管はちゃんと一本分は空いている」

悪魔の姿に戻る気もなければ、『仲魔』になるつもりもないし、管の中に収まるつもりもない。
僕はペルソナを降臨させる。
あの世界での親友の本来の姿そのものの、ペルソナを。
死神・タナトス。
背中についた羽のブースターで空も飛べたこのペルソナは、ただ彼を冷たく見据えるだけ。

「神降ろし…悪魔のくせに悪魔を降臨させるとは、面白い悪魔だ。貴様は」

管から悪魔を呼び出すその前に、と僕はタナトスの能力を発動させた。

死んでくれる?

トランプのカードに突き刺さる槍が、ピンポイントに雨のように彼に降り注ぐ。
死神・アリスから引き継いだこの能力は彼に対して致命傷を……。

「くははははは!!」

与えなかった。
…すごいな…デビルサマナー・葛葉雷堂。
いくらあの時代の僕でもこの攻撃にはやられたと思うよって…。
見れば彼をかばうように仲魔が管から召喚されていた。

スサノオ。

厄介だな、としか言いようがない。
僕は槍をくるりと回して雷堂が放った銃撃を叩き返した。
鷹円弾を使えないのは、僕のペルソナの技をサマナーの代わりに受けたから、だと思う。
呪殺を無効にする上に物理攻撃にも強いスサノオにタナトスのスキルはそうそう通用はしない。
火炎も吸収するから、いつも使えるサタンのマハラギダインも使えないときたもんだ。

「貴様を仲魔にしたその後は、その霊力をもってして世界を渡るとしよう…っ」

……やっぱりもともとこの世界に彼が存在していたわけじゃないのか。
でも世界を渡る…平行世界に飛ばされて彼と会ったときは元の世界に戻るのに必要なものは三つの角柱だったけれど。
術を行使してくれるだろうヤタガラスの使者もこっちに来てるのか?
…なんて考え事してる余裕はなかったっけ。

ペ ル ソ ナ
「スサノオ!!」

おぉおおおおおおおっ!!

雷堂の呼びかけに応えるように、スサノオが僕に向かって飛びかかろうとしてくる。

逆鱗撃!!五月雨斬り!!

スサノオの攻撃とタナトスの攻撃がぶつかる。
一撃目でスサノオの巨体を押しとどめ、二撃目で揺らし、三撃目で弾き飛ばせた。

「なかなかやる!! だがその神降ろし、時間が少しかかっているのに気がついてるか?」

言われなくても。
僕は雷堂の刀を受け止める。
刀と僕の槍が火花を散らした。
その音が砂漠によく通る。

「スサノオ!!」

飛ばされた悪魔に呼びかける彼の声音に気がついた。
まずい。
合体技を使われたらしゃれにならない!!

ペ ル ソ ナ
「一度食らった技など、効かぬわ!!」

そういわずにもう一度、食らってくれ。切実に!!

五月雨斬り!!

複数回の斬撃で砂が舞い踊る。
けれどそれに耐えたのか、スサノオ…荒ぶる神とそれを従えるデビルサマナーの姿がそこにいる。
至近距離。
合わさる呼吸。
来る!!


天命滅門!!


メギド系っ!?
光が僕とタナトスに襲い掛かった。
メギド…攻撃系統では正直どんな部類になるのかはっきりわからない。万能系破壊魔法って僕は覚えてる。
属性を超えたその威力は悪魔になった僕…マガタマの最高位とされるマサカドゥースを備えた僕の身体を傷つけられることが可能なほどの威力を持つ。
さっきの技はサマナーと悪魔の合体攻撃だ。
僕もかつて『ライドウ』として名乗って大正時代を生きていた頃、使ったことがある。
…マガタマたちがいっせいに活性化した。
その威力と、僕が戦う姿勢を見せてからずっと傍観していたマガタマたちは、彼と彼の仲魔の技に興奮し始めてる。

戦いたい、闘いたい、たたかいたい、タタカイタイ。

どくんどくんと心臓の音と同じ波長で、その意識を僕に伝えてくる。

人の身じゃなくてもいいじゃないか。/
悪魔に戻って闘おう。/楽しめそうだ。/一気に片付けろ。/いや、それだと興ざめする。/なぶり殺しにしろ。


タナトスを盾にしてもこの威力…っ。
というかマガタマたち、君らには話し合いという選択はないのか?あるわけなかろう。/何を今更。/だよね。
タナトスと、岩場にはさまれた僕は、とりあえず足元にある岩を蹴り飛ばす。
ウソップがくれた武器を離さなかった自分を後で褒めようと、思った。

…褒める?

いつも闘うのは当たり前で、一番大事にしたのは仲魔たちが変化してくれたり、何かしらの精神がそこに宿るものばかりで。
何もやどっていない武器や道具は、文字通り使い捨てなのに。

なんで?

自分の考えに自分でそう突っ込みを入れると、これを渡してくれたウソップの顔が浮かんだ。

「お前の為に作ったぞ! 大きくするのは簡単だ!」

膝の上に僕をのせて説明してくれたウソップ。
ウソップの手のみで作られたそれを、僕は一瞬だけ目を走らせて、思考を切り替える。
ひたってる暇、ないだろう自分。
時間の感覚がなくなっていくから、早めに合流しないと。
ぎゅっとそれを握り締めて、五月蝿くなっていくマガタマたちの要求を押さえつける。
ぼろぼろになった上着を脱ぎ捨てると、つい数時間前に雷堂につけられた銃痕をさらした。
スモーカーに縫われたその跡はサタンのスキルで治療しても跡が残っている。
縫われたからじゃない。
僕の目の前で、僕が立ち上がるのをわざわざ待っていてくれているデビルサマナーの力と技と、そしてそれに加えての何かしらの彼の意思が僕の身体に跡を刻んだ。
まるで自分の標的なのだと。
僕の左腕にしっかりと巻かれた包帯、その下にあるあの印とは大違いなのだとまたどこかで思いながら、消えかかったペルソナに意志の力を流し込む。
それを見て、デビルサマナーはにたりと笑った。



何度となくその刃を身体にかすらせた。
何度となく技を食らった。
けれどこちらもそれは同じことだった。
負けない、負けたくない、負けられない。
あの海賊達の傍から離れようと思っていたけれど、流れて、流されて、一緒に居る。

けど。

カルーの困った顔、ナミさんの怒った顔、チョッパーの泣きそうな顔、ウソップの得意げな顔、サンジの嬉しそうな顔、ゾロの眠そうな顔。
…ルフィの自信満々な笑顔。
ビビの。
ビビの涙と、決意と、笑顔と。

ぎり、と歯を食いしばる。
約束した。
だからヒメを、ヒメの宝物を彼女に渡した。
取りに行くからって約束したんだ。
みんなのところに、戻るって約束したんだ。
約束は誓約。

だから。
…だから。
だから、負けられない!!

僕はもう一度ペルソナを発動させた。
岩場が派手な音を立てて崩れ落ちるのが第2ラウンドの始まりだ。




あれから何分経過したのか、もうわからない。
赤い血がしたたり落ちた。
それはお互い様のようで、本当に壮絶な笑みをこちらに向けてくれる。
かつての『僕』もここまで強面にはならない、と思いたい。
ウソップの作ってくれた武器はなんどとなく助けてくれた。
ペルソナを使って周囲の岩場を切り崩し、スサノオとサマナーを隔離する。
腕を一本とられた(ようは折られた)けれど、そのぐらいの代償は払ってもお釣りが来る!
僕はようやく、身動きの取れなくなった彼の喉元に僕は切っ先を当てられた。

満身創痍。

肩で息をしてる彼に目をやる。
ただあとちょっとだけ動けば、彼は死ぬ。
…僕が、殺す。
殺せる位置に、いる。

「…どうした? いまのうちだぞ、大悪魔」

殺せ、ころせ、コロセ、殺してしまえ。

マガタマたちの一部が声高にそう訴える。
ウソップの作ってくれたそれを握り締める。
…ウソップ…?
ウソップが折角作ってくれたもので命を刈り取って、いいのかな?/それが武器だ。それが役割だ。

けれど。
でも。
何を迷うことがある?
…。

人を殺すのに、まだ抵抗があるとでも? /もうお前身体は血に染まっているじゃないか。/何を躊躇うことがある? /こいつは敵だ。

うん、この人は敵だ。
…でも。

「躊躇が命取りになる。そのことをお前は知っているはずだ」

背後の気配に再度ペルソナを発動させた。
利かないまでも、動きを止めさせればいい!

「こちらがお留守のようだぞ、大悪魔」

血だらけの手で取り出したんだろう、その銃の先を僕に向けていた。
五月雨斬りで、とうとうスサノオを攻撃不能なまでに陥らせたけれど。
それと同時に僕の体力も削られて、ほんの少ししか動けない。
サマナーは、笑った。
引き金が、引かれた。

銃声がよくその場に響いて、木霊した。

ライ@ウにおける仲魔・スサノオのデータ
蛮力 スサノオ
相性/氷結弱点/物理に強い/呪殺無効/火炎吸収
初期スキル/逆鱗撃(敵単体に物理小ダメージ)/鷹円弾(武器の軌道上にいる敵を貫通する物理中ダメージ)
/力まかせ/飛行
合体技/天命滅門(周囲に範囲特大の万能超特大ダメージ)
習得/豪傑の転心(一定の確率で物理攻撃の威力増加)


ペル@ナ3 タナトスのデータ

死神 タナトス(死神最上位)
相性/光弱点 闇反射
死んでくれる?(闇・SP35 敵全体に超高確率で即死効果)/ ムドブースタ(闇属性スキルの成功率が上昇)(アリスから継承)
五月雨斬り(斬撃 HP18%消費 敵単体に複数回、大ダメージ)/
小剣の心得、かな?

…つまりはタナトスの特殊攻撃の大半はあんまりスサノオに効かないよ、ということ。
サタンも微妙か。

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