哀視点



呼んでもきっと助けになんてこれないわ。

そういうと船長はにっと笑った。

「そりゃあ、お前の呼び方が足りねぇだけだ」

麦わら帽子をかぶりなおして、そして私の顔を覗き込む。

「お前は、俺の仲間だろうが」

頭をなでられた。

「呼べ、哀」

世界が違うだの、そんな理由も吹き飛ぶその声に、あたしは震えた。



だから。



「灰原、灰原!!」
「哀ちゃん!」
「やめてください!!」
「やめろ! 灰原になにすんだよ!!」

少年探偵団のみんなの声が聞こえる。
黒の組織…博士も撃たれて…。
あたしも、今、まさに殺されようとしてるときに、何を思い出すのか。

「さぁ、シェリー…」
「…助けて…!」

探偵団の誰かの声が耳に届いた。

「助けて、ルフィ…!」

ルフィ。

船長、むぎわらの海賊。
彼の声が蘇った。



「呼べ、哀」




「助けて…っ!! ルフィ…!!」
「何を言って…「ゴムゴムの〜!!!!!」…なに?!」

バズーカー!!!!!

ものすごい音がしたかと思うと、あたしを踏みつけていた組織の人間が吹き飛ぶ。

「誰だ!」

周囲の連中のその声に、彼はその姿を現した。
ぺた、ぺた、というサンダルの音と一緒に、数人の足音。
荒い呼吸を吐き出しながらあたしは顔を上げた。
工藤君が呆然として、そして笑顔になっていく。

「哀!」
「大丈夫?!」

ナミとロビンが助け起こしてくれる。

「あ、あたし、よりも博士を…撃たれたの…!」
「博士、無事か! このキャプテンウソップ様がきたからにはもう安心だぞ!!」
「博士〜!!」

ウソップさんとチョッパー先生が血まみれの博士の傍に走るのが見えた。
大丈夫、と思った瞬間にうめき声が聞こえる。
少年探偵団の皆を捕まえていた連中は くんが助けてくれたみたいだ。
ひゅうひゅうと息がもれる。

「哀」

その声に、笑みを作ることができた。

「後は俺達に任せろ」

ルフィの言葉に、すらりと刀が抜かれる音が聞こえた。
ゾロがその三本の刀を抜いて、構える。

「…」

サンジがその隣にたった。

「よくも哀ちゃんに怪我させやがったな、クソ野郎ども…っ」

低い声と、その覇気に飲まれていくのが判る。

「お前らは、なにもんだ? どこから…」

組織の連中の言葉を、船長はさえぎった。

「よくも俺の仲間を傷つけてくれたな!! 俺達が相手になってやる!!」
「てめぇは…?」

「俺はモンキー・D・ルフィ! 海賊王になる男だ!!!」


異世界の海賊王はそう堂々と言い放った。




 

SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送